2015年6月2日公開シンポジウム報告

公開シンポジウム「そうだ スゴイ日本人に会おう―社会起業家・中村俊裕氏から学ぶソーシャルビジネスと人生観」報告

経営学部3年…小川蘭那(本企画のリーダー)、安部薫、藤田治弥、山田侑輝
社会学部4年…山田月乃

途上国の社会問題をビジネスで解決しようと活動している「スゴイ日本人」に直接会って話を聞いた上で、自分たちの将来に生かしたいという思いから発起したのが本企画です。そのために、マッキンゼーアンドカンパニーと国連開発計画(UNDP)を経て、共同創設者としてNPO法人コペルニクを起業した中村俊裕氏を招聘しました。 コペルニクは、革新的なテクノロジーを途上国に届けることをモットーとして、インドネシア等で活動されているNPO法人です。具体的には、川や井戸の水を簡単にろ過できる装置や手動で発電できるLED電気など、リーズナブルで革新的な製品を世界各国の企業から集め、定価の半額を寄付で賄い、残りの半分を購入者に払ってもらうシステムを提供しています。 中村氏がコペルニクを起業したきっかけは、国連職員だった時に、国連での貧困削減の活動が末端の人々に行き届いていないと思ったからだそうです。

本企画に乗り出したのは、高校生の時から関心のあったソーシャルビジネス、それから経営学部でイノベーションビジネスについて少々勉強したからです。 コペルニクのように、革新的な商品で社会問題を解決するビジネスに魅かれました。 そして、同じくソーシャルビジネスに関心の強い仲間を集め、企画を発足しました。

講演では、インドネシアにある一戸建てのオフィスや国連時代に同僚と肩を並べて撮った写真を見ながら、中村氏のマッキンゼーとUNDPでのご経験やコペルニクに関して話していただいた後、しゃべくり007風に学生と中村氏とのパネルディスカッションでは、中村氏が大学時代に部活漬けだったと話し、驚きました。 強い信念を持っている人は、なんとなく、部活タイプよりまじめに勉強していたような固定観念が自分自身の中に存在していたからです。 そして参加者をグループに分けて、中村氏が出題した問い「途上国の多くでは、プラスチックのボトルや袋が使われた際、処理施設も発達していないため、燃やされるか(有毒ガスを出す)、捨てられてゴミとして残るかのどちらかがほとんど。どうすれば、インフラの整っていない途上国で、有効にプラスチックの再利用・処理が可能になるでしょうか ?」についてディスカッションをしました。 参加者からは、「ゴミを地球に優しい形で処理することの必要性をわかってもらえるようなイベントをやるのはどうだろうか」などのアイデアが出ました。

今回の講演では、コペルニクとして事業展開している地域での課題、その課題解決した実例、また中村氏ご本人の経験を踏まえてお話していただいたので、非常に参考になる点が多くありました。例えば、 途上国の魚市場でクーラーボックスを配布した例では、管理者を決めたり運用の方法などを話し合う場を設けずに、配布だけを行ってしまったために、実際に一部の漁民が家に持ち帰ったり、市場の共通財産としては利用されなかった話などがありました。 途上国に限った話ではありませんが、ビジネスや援助を行い、何かしらのモノを提供するときには、単純にモノを渡すだけではなく、運用方法まで提案・定着して初めて意味をなすものだという点が印象的でした。

今回の講演で一番印象に残っている点は、中村氏が社会問題を自らの手で解決していきたいという情熱が挙げられます。 紛争や移民などの問題がニュースで流れることが多く、それを見た幼少期の中村さんは社会問題に興味を持ち、国連という世界の社会問題に近づくことができるキャリアを夢み、そのキャリアに向けて、大学院、国連インターン、マッキンゼーと経験されました。 国連に入ってからも、自らの手という部分で物足りなさを感じたことにより、自分でコペルニクスという会社を立ち上げました。 多種多様なキャリアも社会問題に対する情熱が一つに繋げていたということが事前知識では知り得ないことで、強く心に残りました。