2022年度 陸前高田プロジェクト 実施報告

テーマ 「陸前高田市の歩みから持続可能な都市について学び、地方都市が持続可能な都市となるために自分たちにできることを考えよう」
-- SDGs「11 住み続けられるまちづくりを」 の視点から-- 
《Rikuzentakata × SDGs × YOU》
参加者 立教大学、香港大学、米国よりスタンフォード大学、ボストン大学キーン大学サンタクララ大学の計15名
​実施日
​2022年7月2日、8月2日、8月24日~30日
プロジェクト概要 2019年度の実施から3年ぶりに、参加者全員で岩手県陸前高田市を訪問する4泊5日のフィールドワークが実現しました。現地では震災遺構や復興祈念公園、再建した市内の様子を視察しました。また、市役所や市で事業を営む複数の方々にご協力いただき、これまでの歩みや現在の取り組みについてお話をうかがい、お話いただいた方との意見交換を交えながら震災復興やまちづくりについて学びました。 最終報告会では、SDGs Goal 11の視点を軸に、現地で学んだこと、グローバルコミュニティや自分が暮らすコミュニティの課題と持続可能性への取り組み、自分自身が取り組むべきことなどについてグループごとに発表しました。
プロジェクト内容

①事前研修 7/2(立教生のみ)
立教生のみが参加。本プロジェクトに取り組むにあたり、各自の目標確認、陸前高田市や東日本大震災について理解を深めるための下調べなど、本研修に向けて準備を進めました。

②事前研修 8/2(海外大学生合同。オンライン)
オンラインで海外学生を含む全参加者が集合。プログラムの目標等について共有した後、本年度の現地研修を全面的にサポートいただいた一般社団法人マルゴト陸前高田様がオンライン中継で参加くださり、陸前高田市の震災と復興に関する概要をご紹介いただきました。


③事前研修 8/24(立教大学) 
立教生と海外大生が初対面。アイスブレイクで打ち解けた後、SDGs「11 住み続けられるまちづくりを」の考え方や、現地研修において効果的な学びを得る考え方について理解を深めました。
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④現地研修 8/25~29

8/25 Day1
1日目。現地研修へ出発。東北新幹線に乗り一関で下車後、バスに乗継いで陸前高田に到着。津波の被害を受けた海岸エリアに開設された復興祈念公園や防潮堤、奇跡の一本松、震災遺構である旧気仙中学校を視察後、陸前高田市の都市計画課の永山係長より震災復興から新しいまちづくりに取り組む陸前高田市のお話をうかがいました。
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8/26 Day2 
2日目は、津波伝承館の見学からスタートし、市内中心部も視察しました。
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午後は広田町の地域交流の拠点「長洞元気村」へ。事務局長の村上様に、震災当時のお話を聞かせていただきながら、実際に震災時に直面する様々な問題や人々の判断について実践的に学ぶ「クロスロードゲーム」を行っていただきました。ランチは元気村で働く地域の皆さんが用意してくださった郷土料理を味わいました。その後移動したグローバルキャンパスでは、屋外に展示されている仮設住宅体験館を見学しました。
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8/27 Day3
3日目はグローバルキャンパスにて、地元で活躍する3組の講師をお迎えしてお話をうかがいました。
最初は、陸前高田しみんエネルギーの大林様。地域電力会社として、地元の自然エネルギー発電を通して、地域の持続可能性・活性化を推進する先進的な取組みを目指されています。
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続いて、震災後の市民コミュニティ構築に貢献してきた「りくカフェ」の運営メンバー、鵜浦様と吉田様。りくカフェは、震災直後の市民を元気づける拠り所として2011年8月に開設したコミュニティカフェ。地元住民と建築・まちづくりの専門家が集まりNPO法人を設立、地域のコミュニティづくりに貢献されています。
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最後のゲストスピーカーは歴史ある醸造業者「八木澤商店」の河野社長。津波によって醤油蔵など全てを失いましたが、他所に預けていた「もろみ」の発見から醤油醸造を復活させました。震災直後から社員の雇用を守り、新しい雇用機会も作り続けている河野社長は、自社再建だけでなく持続可能なまちづくりにも精力を注いでいます。2020年には「発酵」をテーマにした商業施設「CAMOCY(カモシー)」オープンにも尽力。地元企業や飲食店と協力し、失われつつあった「発酵文化」復活を目指しています。 この日の夕食はCAMOCYで、地元素材と発酵技術が織りなす美味しい料理を楽しみました。
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8/28 Day4
4日目の講師は
市内の飲食店「カフェフードバーわいわい」店長の太田様。千葉県出身の太田様は陸前高田で2009年11月に同店をオープン。その後津波によって店を流失しましたが「市や人々のために何かしたい」という強い思いで店を再開。集いの場を提供しながら復興のために尽力されてきました。現在はお店の位置する仮設商店街全体の払い下げを受けてこれを大改修。地域のハブとなる「たまご村」の運営をスタートさせ、”村長”として奮闘中です。
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その後、"広田町をもっと好きになれる空間"を目指す古民家カフェ「カフェ彩葉」へ。東京出身のオーナー、野尻様は大学時代に訪れた広田町へ移住を決意。野尻さんも所属するNPO法人SETの副理事長岡田様からは、目指す「人口が減るからこそ豊かになるまちづくり・ひとづくり」のために行ってきた活動についてご紹介いただきました。
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8/29 Day5
5日目、現地研修最終日。グローバルキャンパスにて、現地研修での学びからの考えをグループごとに話し合いました。テーマのSDGs Goal 11「住み続けられるまちづくりを」を考えるにあたり、グループごとに特に注目する観点を4つ(包摂性[inclusive]/安全性[safe]/回復力[resilient]/環境の持続可能性[environmentally sustainable])の中から1つ選び、これを軸として考えをまとめていきました。そして名残惜しくも東京へ。

最終報告会・振り返り 8/30(立教大学)

最終日8/30は最終報告会。3か国の学生混合の4つのグループによる発表が行われました。陸前高田の震災復興やまちづくりに関して学び意見交換した内容をふまえ、SDGs Goal 11「住み続けられるまちづくりを」の観点から、グローバルコミュニティや自分たちが暮らすコミュニティが抱える課題を再認識し、各都市が持続可能な都市となるために自分たちには何ができるのか、グループで話し合った結果を発表しました。会場には本学教職員や立教生が集まり、これまでお話をうかがった陸前高田市の方々にもオンラインでご参加いただき感想や考えを共有いただきました。

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プログラムの様子はアルバムページでも紹介しています!More Pictures here! ↓
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各グループプレゼンテーション

Group1
「Resilience through Connection 人とのつながりによる復興」


人とのつながりが復興の鍵になることをテーマに、震災後、人々が支え合うことでコミュニティが活性したという事実から、コミュニティのために自分たちは何かできるかを提案しました。

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Group2
「Inclusivity in RT 陸前高田の包括性」


「Inclusivity(包摂性)」の観点から、コンパクトなまちづくりによる地域の連携、財政の安定など、世代間交流の促進や住民が居場所を確保できる地域社会について考察しました。

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Group3
「Community Sustainability Through Leadership
持続可能なコミュニティをつくるために ~リーダーシップを通じて~」

震災後の陸前高田を支えてきた地元の方々のお話をふまえ、人を巻き込んでいくリーダーシップ、多様性を大事にすること、共感する力と感謝などの重要性に気付き、「誰かのため」に「自ら動く」姿勢が大切であるとの結論を導きました。

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Group4
「Values of Rikuzentakata: Tradition and Reconstruction
陸前高田の価値観:伝統と復興」

震災後に打撃を受けた陸前高田の観光業、少子高齢化や人口減少により担い手が減少する各業界の問題に触れながら、これからのまちづくりについて考えました。

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3年ぶりにアメリカ、香港からの海外大生を迎えて、現地研修を実施した2022年度 陸前高田プロジェクト。実際に赴き自分の目で見る陸前高田市の復興とまちづくり、直接お聞きした地元の方々のご経験や考え方に触れる機会を得て、参加者それぞれが持つ異なる視点から住み続けられるまちづくりについて考察することができました。また、7日間を共に過ごした海外からの学生とも深い絆を築き、貴重な異文化交流の機会となりました。 G4.JPG

参加者体験談

本プログラム参加学生の体験談です。

橋爪咲希さん(法学部国際ビジネス法学科1年)

今回のプログラムでの一番の学び
★4IMG_4557copy.jpg本プロジェクトの一番の学びは、自分で自立し、自分に何ができるか考え他者の為に行動する力である。 陸前高田には「津波てんでんこ」という言葉がある。この言葉は「津波が来たら各個人で逃げなさい」という意味を持つ。一方で陸前高田の方々は、地域の為に何ができるか考え行動する力で溢れていた。こうした特徴は地域の包括性を作り上げていた。本プロジェクトにおいて、様々な国籍や年齢の友人と助け合い学びを深める中で、この考えは地域の活動だけでなく、個人の人間関係や大学生活にも求められていることだと気付くことができた。 また複数の国の学生とともにプログラムに参加する中で、英語で話すことに慣れ、自分なりのリーダーシップを見つけることができた。こうした陸前高田プロジェクトで身につけた力や発見は、私自身の成長につながるだけでなく、前述の「自分から他者に何ができるか考え行動する」ための力を与えてくれるものにもなると思う。 今後の大学生活においても、支えてくださる先生方や陸前高田の方々、プロジェクトで出会った友人達への感謝を忘れずに学んだことを活かし様々なことに挑戦していきたい。

❒ 体験談の読者に共有したいと思うこと
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陸前高田プロジェクトは多くの魅力を持っている。現地に実際に訪れ、現地の方の話から震災への学びを深められる点や、陸前高田の人々が持つ包括的なコミュニティ形成に向けた考え方や価値観は今後の大学生活を送る上で大きな助けとなる。また少人数で五日間過ごす中で、年齢・国籍を超えた大学生活の支えとなる人間関係を構築できる。海外学生との交流では、国内において日常的に英語で会話することができ、英語で話す楽しさを純粋に感じることができた。特に、プロジェクト終了後も海外学生の友人たちとSNSでコミュニケーションをとっており、国内において、海外学生と交友関係を持てる点が陸前高田プロジェクトの大きな魅力の一つであると考える。国内学生との交流では、同じ目標や志を持つ学生に出会え、刺激を受けることができた。また学部・学年を超えた交流から、新しい視点や助言を受けることができ、私の大学生活をより豊かなものへと導いてくれた。何より陸前高田の方々や先生方は、私達学生に対し多くの学びや体験を与えて下さった。私は、こうした陸前高田プロジェクトで得たことのできる学びや人間関係は、大学生活の大きな支えとなると考えている。


工藤龍太朗さん(経営学部国際経営学科3年)

❒ 学んだこと
「個人のリーダーシップ力の結束力が持続可能なコミュニティを導く」
★IMG_4861copy.jpg 震災後の陸前高田市における復興や新規ビジネスで活躍する方々のお話や陸前高田プロジェクトに参加した国内外の学生との議論から、個人の多種多様なリーダーシップ力が結束することで持続可能な地域社会を実現できることを学びました。
 VUCA時代という先行き不透明な現代のビジネス環境で事業継続計画(BCP)の必要性が高まっている中で、陸前高田市は災害レジリエンスと地域創生を確保するまちづくりを産官学で推進しています。2011年の東日本大震災をきっかけにその重要性は世界中でますます注目されています。
   八木澤商店(醸造業)を経営する河野さんは、「人を巻き込む力」を活用しまちづくりに大きく貢献している方の一人です。持続可能な地域社会の実現のための最重要課題である、地域企業によるBCPの策定と着実な実行プロセスにおいて、八木澤商店はステークホルダーを巻き込みながら物的資本と人的資本の両面でのリスクマネジメントと事業拡大を進めてきました。この事例から、災害レジリエンス強化と地域創生は同時進行で推進することを学びました。一方で、コミュニティ再構築の目的と目標を意識した適切なステークホルダーを探索するプロセスの構成要素という点で世界中の多様な人々と夢や目標を語り合うことの重要性を学ぶこともできました。
  陸前高田では、「人を巻き込む力」、「地域の利点を生かす力」、「共感し感謝する力」、「誰かを想う行動力」、といったリーダーシップ力が広く共有されており、誰か一人が上記の4つを網羅的に保持しているのではなく、様々な人々がそれぞれの得意分野においてリーダーシップを発揮し、地域全体で相乗効果を発揮することでコミュニティを持続可能な社会へ導いていると感じました。
  このプロジェクトを通じて多様なバックグラウンドを持つ地域の方々やや国内外の学生と貴重な経験や知見を共有できたことから、陸前高田プロジェクトで紡いだ絆は今後の私の人生を力強く支えてくれると信じています。

❒ プログラム参加を検討している立教生へのメッセージ
「誰かのために行動することの重要性」
IMG_4372copy.jpg この体験談を読んでくださっている皆さん、この先の人生で様々な苦難に立ち向かうことや時には深く悩むこともあると思いますが、大切なひとのために目標に向かって日々歩み続けていくことで、それが生きがいとなり私たちの背中を押してくれる大きな力になります。
 ある方は人々の架け橋となるようにと願いを込めて始めたカフェ運営がご自身の復興の希望になりました。ある方はそのカフェを通じて家庭を築きました。ある方は誰かを救いたいという思いで参加した災害ボランティア活動で自身の無力さを痛感しました。ある方は限られた非常食をコミュニティ外のより多くの人々にも分け与えることで共存する道を決めました。
 私はこれら一つ一つの行動が積み重なることで地域に根差した復興や新しいまちづくりが実現したと考えています。ぜひ陸前高田の地へ足を運び地域の方々の話に耳を傾け、震災当時やその後の復興、発展に思いを馳せてほしいと思います。そしてご自身の周りのコミュニティに経験や知見をどう生かせるのか、多角的に学んでいただきたいと思います。


❒ 最後にひとこと

 陸前高田プロジェクト2022にご協力くださった陸前高田の全関係者の皆様、この度は本当にお世話になりました。皆様のお陰で目標としていた以上の学びを得ることができました。この場を借りて感謝申し上げます。そして、ともに参加した立教生およびアメリカ・香港から集まった学生の皆さん、本当にありがとうございました。ご尽力いただいた多くの方々のお陰で事前研修含む2か月間のプログラムを乗り切ることができましたし、次の目標に進む準備ができました。得られた学びを活かし、出会ったすべての人々との絆をより一層強めていきたいです。
 約6年後の2028年頃には今回お世話になった大林さん(ピーカンナッツ未来研究所 他勤務)が手がけるピーカンナッツが収穫できるとお聞きしたので、その時を非常に楽しみにしています。
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以 上

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