国連ユースボランティア 活動レポート
ガーナ |
堤 万里子 さん (グローバル・リベラルアーツ・プログラム(GLAP) 4年)
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2023年11月の活動レポート
2023年10月からガーナのUNHCR(国連難民高等弁務官)で活動中の堤さんのレポートです。
2023年11月
難民雇用促進のための活動
11月から難民雇用促進活動のサポートを任されました。ガーナにいる難民の中には、奨学金をもらって大学に行き学位を取得した人やコミュニティーセンターで職業訓練を受けた人など、教育を受けてスキルを持った人が多くいます。それにも関わらず多くの場合、彼らにとってインターンシップや仕事の機会を得ることは困難です。その理由には、偏見、難民の働く権利に関する知識の欠如、ガーナの失業率の高さと相まった産業からのサポートの欠如、スキルある難民に関する情報の欠如、などがあげられます。そのためUNHCRとしては企業にスキルのある難民のことを知ってもらい、雇用機会を増やしてもらえるよう積極的に働きかけようとしています。
私が任された仕事は、A)企業に渡すためのパンフレットづくり、B)日本企業に難民雇用促進を働き掛けることの二点です。パンフレットづくりではスキルのある難民が多くいることを企業に知ってもらうため、伝えたいことを分かりやすく簡潔に述べることを意識しました。パンフレットづくりといえどもすべてを自分ひとりで完成できるものではなく、常に仲間の協力や助けが必要であることを改めて理解しました。パンフレットの内容に必要な情報、デザインに必要な写真、デザイン方法、ドラフトに対するアドバイス・コメントなどを得るために、他の人とコミュニケーションをとりながら完成に近づけていっています。また、オフィスにいるたった一人の日本人として少しでも役に立てることはないかと思い、ガーナにある日本企業に難民の雇用を働き掛けようと活動を始めました。大使館に連絡をとり日本企業にリーチアウトするためのアドバイスを得るなど、自分にできることを日々模索しています。
第三国への再定住が決定した難民を空港でお見送り
難民である状態は一時的なものであるべきであり、難民の問題を解決するためには3つの方法があります。一つ目は帰国が安全とされる場合に難民が自国に自ら進んで帰ること、二つ目はホスト国の永住権を得るなどしてホスト国に社会的、経済的、法的に統合されること、三つ目は第三国に移り住むことです。そしてUNHCRの役割の一つは、三つ目の解決方法をとる場合に、難民にインタビューをして彼らの話の事実関係をよく確認し、それに基づいて第三国への再定住申請のための書類を作成し、難民の定住を受け入れてもらえるように難民を弁護することです。
11月29日、第三国への再定住の申請が通ってアメリカ合衆国に移り住むことが決定した70人あまりの難民が、ガーナの首都アクラにある空港からアメリカ合衆国に飛び立ちました。UNHCRの同僚二人と私は空港まで彼らをお見送りに行って、私はそこで難民たちと話をする機会を得ました。第三国へ再定住する難民には家族連れが多く、皆にこにこと嬉しそうにしていた様子が印象深かったです。彼らはアメリカ合衆国というより発展した国で新しい人生を始める未来に希望を抱いていたのでした。私が話しかけると彼らは笑顔で愛想よく応じてくれて、彼らの名前や、アメリカのどこに行くのか、今までガーナに何年間住んでいたのか、などを教えてくれました。UNHCRをはじめ第三国への再定住実現のため支援してくれた国連に感謝を述べる難民もおり、彼らの笑顔で私も嬉しくなりました。しかし一方で、笑顔の奥にある彼らの経験してきたこと(人権迫害や暴力にさらされるなど自国から逃げざるをえなかった経験)を想像すると複雑な気持ちにもなり、今、彼らの笑顔があることがとても喜ばしいことだと強く感じました。彼らには希望のある日常を取り戻してほしいと思います。そして、UNHCRの仕事が人々の人生を変える重大な役割を担っていることを改めて実感しました。
▶当日の様子をレポートしたUNHCRガーナの記事はこちら
Seventy refugees from Ghana depart for resettlement to the USA
コートジボワール難民のExemption casesを読む
2010-2011年に大統領選挙によって国内が内戦状態になってしまったコートジボワールは、現在状況が大きく改善したことから国際社会から平和な国として認められています。自国が平和であれば難民である必要はなくなるので、現在、ガーナにいるコートジボワールの難民には、自国に帰るか、または難民としてではない形でガーナに留まるかの選択肢が与えられます。一方で、例外的に国際保護が引き続き必要な難民に対しては、ガーナ政府は難民の地位を持ち続けることを認めています(exemption)。
今月私に任された仕事の一つは、そのような例外的に認められたコートジボワール難民のストーリー(exemption cases)を読み、彼らの中で第三国への再定住に適する者がいるか判断する同僚のアシスタントをすることでした。これを判断するためには、どのようなケースが第三国への再定住に適するのか、または適さないのかの判断基準を理解しなければいけません。そのためまずは知識を得るためUNHCRの第三国再定住ハンドブックを読んだり同僚に話を聞きに行ったりすることから始め、そして実際にケースを読んで要約とコメントを書きました。第三国再定住に適する難民というのは、とてもとても簡単に言うと自国で過去にひどい迫害(past persecution)を経験した人々です。コートジボワールでどのような暴力にさらされたのか、現在もひどいトラウマで苦しんでいるのか、コートジボワールに帰国したとしたらどのような危険な目にあうと想定できるのか、などに注目して内容をまとめました。自分の知識不足を実感したため、難民の地位決定や第三国再定住の判断基準に関する知識を今後さらに培いたいと強く思いました。また内戦から逃げてきた難民の体験を読んでその内容に衝撃を受けたため、世界で起きていることにしっかりアンテナを張ってこれからも学びを深めなければいけないと思いました。
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左上:ケリー・クレメンツ国連難民副高等弁務官がガーナ・アクラオフィスを訪問した時のミーティングの様子/右上:難民をお見送りしたときの空港にて同僚と/左下:ガーナ日本人会主催のよさこい祭りにて、日本の文化体験に参加してくれたガーナの子供と/右下:勤務時間後、誕生日を祝ってくれたオフィスの人々と |
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