国連ユースボランティ​ア 活動レポート

 ガーナ   堤 万里子 さん
(グローバル・リベラルアーツ・プログラム(GLAP) 4年)

2024年1月の活動レポート

2023年10月からガーナのUNHCR(国連難民高等弁務官)で活動中の堤さんのレポートです。

2024年1月

難民コミュニティーセンター・ブルーオアシスの活性化に向けて
1月は、アクラにあるブルーオアシスという名前の難民コミュニティーセンターの活性化を目指して、2つのタスクを任されました。一つ目はブルーオアシスを定期的に訪問しそこのマネージャーとコミュニケーションをとること、二つ目はブルーオアシスの活動を難民やドナーに知ってもらえるようにニュースレターを作成することです。

今回のタスクで学んだことのうち一つは、円滑な意思疎通をはかることの大切さです。UNHCRの上司、同僚、ブルーオアシスのマネージャーと話す機会を持つと、それぞれの問題の捉え方や考え方が異なることもあるのだと気付きました。例えば今回、一方はもっと難民にブルーオアシスに足を運んでほしいと考え、他方は難民がブルーオアシスに足を運ぶには交通費の負担が大きすぎるため電話で情報を得られる仕組みを整えるほうが理にかなうと考えていることを知りました。ブルーオアシス活性化という命題のもとにUNHCRとブルーオアシスが目指す方向性の違いを感じ、両者の考えの擦り合わせに貢献できればと、ブルーオアシスでは丁寧なヒアリングをし、その意見を正確にUNHCRの上司に伝えられるよう努力しました。

また、ニュースレターのドラフトを完成させてオフィスで上司や同僚にフィードバックを求めてみると、同じオフィスのメンバーであってもニュースレターのターゲットや配布場所などに対してそれぞれが持っているイメージが少しずつ異なることが判明しました。ターゲットを誰にするのか、何をどこまで伝えたいかのイメージが違うと、なんのためにニュースレターを作っているのか分からなくなってしまいます。そのため、与えられたタスクの目的やイメージのすり合わせをタスクに取り掛かる前にしっかりと話し合う大切さや、タスクを与えてくれた上司にだけ報告・確認をするのではなく同時に同僚ともコミュニケーションを深める必要性を理解しました。

RSCインタビュー補助
今月は第三国再定住に向けたプロセスの中で新たな一面に立ち会うことができました。 第三国再定住に向けたプロセスは以下の通りです。まずは第三国への再定住申請のための書類をUNHCRが用意します。難民の再定住を受け入れるか否かの判断は第三国に決定権があるため、用意が整ったらUNHCRはその書類を第三国に提出します。そしてアメリカ合衆国の場合は、次に、NGOsや国際機関などが運営するResettlement Support Center (RSC)が難民(申請者)をインタビューし、バイオメトリクス、バイオグラフィック、その他の情報を集めます。そののちに、連邦機関であるUS Citizenship and Immigration Service (USCIS)がRSCの集めたデータを審査し、セキュリティ・スクリーニングやインタビューを行い、難民を合衆国に受け入れるかを決定します(UNHCRが書類を提出→RSCによるインタビュー→USCIS によるインタビューといった流れです) 。

これまで私はUNHCRの同僚が書類を作成するのを近くで見てきましたが、今回私が初めて立ち会うことができたのはRSCによるインタビューでした。同僚の書いた書類の先にどのようなプロセスが待っているのかとても理解が深まりました。三日間にわたり、該当する難民がUNHCRのオフィスに来てインタビュー室でRSCとのオンラインインタビューを行いました。私に任されたタスクは、インタビューに使うパソコンなどの機器の支度をすること、難民に手渡す書類を印刷して準備をしておくこと、同僚が難民に説明をするときにアシスタントとして隣にいること、難民がサインした書類をすぐにスキャンすること、難民のパスポート写真撮影時に補佐すること、などです。書類を渡すときやスキャンしたファイルを保存するときなど、難民のID番号や名前に間違いがないか注意深く確認するように努めました。

書類説明や写真撮影のため難民を案内する中で、難民の様子を近くで感じたり彼らと言葉を交わしたりすることができました。例えば、リラックスしている様子の人もいれば、物静かであまり感情を表に出さない人もいました。小さな子どもたちは私と手をつないで歩いたり、私の周りを走り回ったりしていたので、私は親御さんたちが写真撮影に集中できるように子どもたちの様子を見ている役割を買って出ました。同時に私は実際に会って接する難民への理解を深めるため、同僚にお願いして彼らの再定住申請のための書類を読ませてもらいました。書類を読むと、彼らが自国でどのような経験をしたのか、どのような経緯でガーナまで来たのか、ガーナではどのような暮らしをしているのか、ということが分かります。彼らが自国で暴力にさらされてガーナまで逃げてきて、今でもトラウマを抱えていて、加えてガーナでの生活も苦しい状況であるという事実を知ると、とても悲しい気持ちになります。実際に暴力にさらされた過去を持つ難民を目の前にすると、人種や国籍が理由で死の恐怖にさらされ、暴力の痛みに苦しんでいる(苦しんだ)人がこの世にいるという現実を思い知らされます。私にとってはまだ想像の域を越えないことなのですが、それでもそのような恐怖の現実を理解することはとても大切だと思いました。



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写真上段:UNHCRのオフィスにて/下段左:アクラのBlack Star Gate(独立広場内)にて/下段右:ラクダと

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