国連ユースボランティ​ア 活動レポート

 ガーナ   堤 万里子 さん
(グローバル・リベラルアーツ・プログラム(GLAP) 4年)

2024年2月の活動レポート

2023年10月からガーナのUNHCR(国連難民高等弁務官)で活動中の堤さんのレポートです。

2024年2月 その2 (最終回)

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​難民の方とのカウンセリング

五か月間を振り返って
UNHCRガーナで業務にあたった5か月間を振り返ると、(1)第三国定住の知識を身に付けること(2)難民の雇用を促進させること、の2つに力を注ぐことができました。

はじめのころは何に力を注げば良いのかも分からず途方に暮れたことを覚えています。上司に「あなたはこれからの5か月間に何を期待しているか」と聞かれたときにうまく答えられず、悔しい思いもしました。当時私は「国連がどのように機能しているのか、現場の人々がどのような問題に直面しているのかを自分の目で見て学び、大学教育で学んだことを社会のため、人のために最大限に活用する。」という目標を立てていましたが、具体的に何をしたいのかイメージができていなかったのです。UNHCRオフィスで何を得られるのか、また、自分に何ができるのか分からず、自分の望み・期待を具体的に言い表すことができませんでした。一方で自分にできることを探し求め時間が経つ中で、だんだんと具体化される感触が生じてきました。学校のようにカリキュラムなど決まっていない環境で自分たちで道を見つけ作っていく感覚を体験したのだと思います。焦らず、現状や自分を否定せず、落ち着いてできることから行動に移していく、このような姿勢が大切なのだと学びました。

★IMG_7104.jpeg新しい環境では特にコミュニケーションをとり仲間との関係性を築いていくことが重要でした。相手がどのような人かまだ分からない、相手の英語のアクセントに親しみがなく何と言っているのか分からない、皆忙しそうで声をかけづらい、それまでのルーティーンを壊して同僚のオフィスにひょっこり顔を出してみるのもなぜだかためらわれる、、、このように当初まだ職場や同僚らのことをよく知らないうちは話しかけにいくのもためらう自分がいました。ある時、同僚の一人がデータベースの使い方の研修をしてくれました。私は研修が終わった頃には彼女に親しみがわいて一気に話しかけやすくなったという変化を感じました。話すきっかけや機会があれば相手をもっと身近に感じるようになり、オフィスがもっと居心地の良いところになるのだと思いました。それから私は同僚の一人ひとりと少しでも話せるように日々工夫し、親しみがわいて話しかけやすい関係性になったのちは、「オフィスでの自分の役割がよく分からない、何か私にできる仕事はないか」と言った相談も積極的にするようにしました。自分をオープンにすること、時間がかかっても関係を“築く”というイメージを持つことを意識して、多様な仲間とのコミュニケーション力を磨きました。

(1)第三国定住の知識を身に付ける
プログラム参加以前は「第三国定住」という制度のことをそもそも知らなかったことを考えると、UNHCRに来てこれに興味を持ち積極的に学ぶことができたのはとても幸運だったと思います。オフィスで同じ空間で仕事をしていた同僚二人が第三国定住担当であったこともあり、私は2人の専門性の高さや仕事への思いを尊敬すると同時に、第三国定住のことをもっと知りたいと自然に思うことができました。しかし国際法、人権、難民法の知識と経験をほとんど持ち合わせていない私にとっては簡単なことではありませんでした。何が迫害にあたるのか?難民が自国に戻った場合の本当の脅威とは何か?アメリカに再定住したら難民の地位はどうなるのか?やって来た難民を国は追い返せない決まりだけれども、それでは国はただ迎え入れるだけなのか?連邦政府が第三国定住受け入れを認めても州が受け入れたくなかったら難民はどうなるのか?カウンセリングに来ない難民はどうやって第三国定住の機会を得るのか?等々疑問は尽きませんでした。その上難民の経験してきた悲惨な内容に想像力がついていかないこともありました。

UNHCRオフィスという現場で学ぶことはとても意義深かったです。なぜならばその道のプロにすぐに疑問をぶつけることができ、また実際の作業を通じて知識を実践に応用することで、分からないことがどんどん明確化されていったからです。すぐに疑問をぶつけられる環境であったからこそ、知識を吸収するだけでなく、そこに食いついて物事を想像し、積極的に疑問を投げかける姿勢が身についていきました。うなずいて理解した気になるだけではなく、細かいところを想像し「この場合はどうなるのだろう?」と素直に問う練習をしていたような感覚でした。また、実際の作業というのは、カウンセリングでの受け答え、難民申請用紙(RRF)の読み込み、難民の地位が免除された人の中から第三国定住に適するケースを探す作業、第三国定住が決定した難民がいざアメリカに飛び立つときに空港で見送ること、などが含まれました。すべてが実例で、目の前に第三国定住を切に希望し必要とする難民たちがいました。社会に存在する問題が、‘地球の反対側で起こっているらしいがよく分からない大きな問題’ではなくなり、自分の中で実体を持った瞬間でした。難民の経験は想像を絶するものでありますが、紛争のある世の中の現実に目が開かれると同時に、グローバルな社会問題に共感する力を養うことができたと思います。

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制作に携わったUNHCRパンフレット

(2)難民の雇用を促進させる
UNHCRオフィスにいるたった一人の日本人としてなにかできることはないかと思い、日本大使館に連絡をして、ガーナにいる日本企業の方々に難民の雇用促進についてのUNHCRからのメールを一斉送信して頂きました。そのため、難民の持つ技術や学位を紹介し企業の方々に難民の雇用を呼びかけるパンフレットを完成させました。 1月からは難民コミュニティセンターの活性化のために活動することを上司から依頼され、①難民コミュニティセンターの活動を伝えるニュースレターの作成②難民コミュニティセンターにおける職業訓練の受講生の声を調査するためのアンケート作り③難民コミュニティセンターマネージャーとUNHCRの間のコミュニケーションをとる役として週に一度センターを訪問、の3つを提案されました。 パンフレットもニュースレターも自分一人で作成して終わりとはならず、文章を書いたら同僚や上司にフィードバックをもらい、写真を使いたいときはパートナー団体に写真の共有と写真使用同意の確認をお願いし、複数人を巻き込んで一緒に業務にあたったことが印象深かったです。その中で各自が持っているイメージが異なることもあり、何のためのニュースレターなのか、ターゲットは誰か、完成品はどこで配布するのか、と言ったことに関してしっかりと意思の疎通をする大切さを学びました。

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完成したBlue Oasisのニュースレター

ある時、完成品をどこで配布するのかに関して同僚と相談した時に、私はオンラインプラットフォームで配るとしか考えていなかったのですが、同僚はGRB(ガーナ難民審査会)のオフィスでも配布してもらおうと言っていました。自分の考えていなかった意見を得られたというコミュニケーションの大切さを認識すると同時に、なぜ自分には新しい発想が出来なかったのか、新しい可能性が見えなかったのかと考えました。自分の発想力・想像力が乏しかった理由として、私はそれまで指示された通りにタスクを完遂することに集中しすぎて、目的や効果を自分で想像し主体的に考える姿勢を持っていなかったことを認識しました。上司に指示されたパンフレットやニュースレター作りだったので上司のイメージにあったものを作成しようとする一方で、自分で考え決断し創り出す必要があるのだと気づかされました。そのためコミュニケーションをとり報告を欠かさないようにしつつも、何かで迷ったときは作成者・当事者としての自分の意見をまず考えて、それから選択をしたり同僚に相談をするようにしました。主体的に考えられれば疑問や新しい案が浮かびます。国連で働くには、主体的になり新たな観点・意見を持てるようになることが求められると思いました。私の上司曰く、”Think out of box!” です。

今回のプログラムで多くの人との出会いがあり、彼らを通して新たな世界観を得ることができました。多くの人に支えられ、優しさを与えられ、尊敬する姿を見せていただきました。UNHCRオフィスの仲間たち、助け合った同年代のUNVたち、ガーナで出会った日本人の方々、優しいガーナの現地の人びと、日本から支えて下さった大学の方々や家族など、感謝の気持ちでいっぱいです。UNHCRオフィスの文化で私が大好きなところは2つあります。1つはUNHCRは学び続ける組織だという姿勢を常に持っていること、2つ目はUNHCRは家族だと言える温かい仲間意識があることです。この2つの価値観を忘れずに、このプログラムで経験した出会いや発見を今後の自分の糧にしていきたいと思います。(完)

★image食べ物なし.png活動最終日にUNHCRのスタッフと


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